静かな沈殿

薄い霧のような時間が、部屋の中に積もっていた。 目覚ましは何度も鳴ったはずなのに、起きた瞬間には静かで、まるで最初から存在しなかったかのようだ。 椅子に座る。机の上には昨日と同じ紙コップ、昨日と同じ読みかけの本、昨日と同じ形にしわの寄ったタオル。 窓の外ではバスが通り過ぎ、人の話し声が線のように切れ切れに届く。 そのどれもが、遠い。 海のずっと向こう側で起きていることを、単にスピーカーで流しているだけみたいだ。 午前と午後を区切る線は、今日も曖昧なまま溶けた。
如月凪央
如月凪央
如月 凪央(きさらぎ なお) 日常の隙間に落ちる感情を書いています。 派手な展開より、ひとことの沈黙や、言えなかった一言の方が物語になると思っています。 恋愛は好きです。 綺麗なだけじゃ描けないところまで含めて。 更新は不定期。 書けるときに書きます。 読んでくれた人の時間を少しでも奪えたなら、それで十分です。 いいねや感想は励みになりますが、義務ではありません。 読む人も書く人も自由であってほしいので。