別れはいつも謝罪とともに ⑦

別れはいつも謝罪とともに ⑦
「あなたを人間に戻すことは出来ない、それはこの世界のルール。…でも、あなたからキョンシーの力を奪うことは出来るかも」 「…え?」  私の話を一通り聞き終えた先生による思いもしなかった返答に、耳を疑う。 「“人間を食べる”というキョンシーの力を奪うの。あなたたちは人間を見かけた時、食べるまで人間を追いかけるでしょ? あなたもわかると思うけど、どれだけ食べたくないと思っても体は動く。それを自我を失われた状態と言うとすると、あなたを“常に自我を失わない”キョンシーにする」  「まあ、もっと細かく話すわね」と先生は言う。こくりと頷くと、先生はまた柔らかい笑みを浮かべて話を続けた。 「あなたの髪は生前の時に戻る。爪も戻る。人間は食べれない。人間を見ても食欲は湧かず、追おうとしない。嗅覚の鋭さは衰えるけど、目は見える。でもあなたはそうなっても一応“キョンシー”なの。だから、こんな状態になってもキョンシーだと認識される。人間になって襲われることはない」
颯兎ちり
颯兎ちり
早とちりな学生。不定期です。