逃避行14

逃避行14
新大阪の繁華街を僕らはなんとなく歩いた。平日だというのに人は巣の周りを這う蟻のようにうじゃうじゃ歩いており、四方八方から革靴の乾いた音が僕の耳を刺す。鬱陶しく感じ、息苦しさえ僕は覚える。そして僕は今初めて人混みが苦手なことに気づいた。まー、人混みが好きなやつもそうはいないが。  辻は何かを探しているようだった。  ここに行きたいと僕にスマホの画面を見せてきたが僕がわかるわけもなく、先ほどから同じ道を行ったり来たりしている。 「だからGoogleマップは嫌いなんよなー」  辻はそんなことをぼやきながら、またタバコに火をつけた。 「辻さんよくタバコ吸いますね。そんな美味しんですか?」  特に興味というものはなかったが僕はなんとなく聞いてみた。 「え?」  辻はスマホから僕に視線を外した。 「あー、タバコね」
ばぶちゃん
ばぶちゃん
基本連載 時々短編 文章虚偽祭り ナポリ湾 少なめ健三郎 自然薯