勿忘草

教室の一番後ろ、窓側の席が空いたままになっている。 新しい時間割が配られても、誰もその席のことを話さない。 「触れないでおこう」という空気が、日を追うごとに濃くなっていく。 あの日、帰り支度をしていた私に、彼女が話しかけてきた。 「ねえ、今日…ちょっとだけ、いい?」 プリントをしまいながら、私は彼女のことを見ずに言った。
寸志
寸志
はじめまして 恋愛小説を書くことが多いです。