第6回N1 幽閉の香

第6回N1 幽閉の香
 お題 【壁】  白檀の香りが薄靄のように漂っていた。月の光が障子を透かし、部屋の中に幽かな輪郭を落としている。壁際に立てられた金箔の屏風には、牡丹の花が咲き誇り、その花弁の端には朱の絵具が鮮やかに残っていた。 「この壁は、もとは公家の館にあったものとか」  女はしなやかな指先で壁を撫でた。絹の袖が滑り落ち、白い腕が露わになる。その様子を、私は静かに眺めていた。 「美しい……けれど、どこか冷たい壁ですね」
青天目 翠
青天目 翠
なばため すい