第6回N1 幽閉の香
お題 【壁】
白檀の香りが薄靄のように漂っていた。月の光が障子を透かし、部屋の中に幽かな輪郭を落としている。壁際に立てられた金箔の屏風には、牡丹の花が咲き誇り、その花弁の端には朱の絵具が鮮やかに残っていた。
「この壁は、もとは公家の館にあったものとか」
女はしなやかな指先で壁を撫でた。絹の袖が滑り落ち、白い腕が露わになる。その様子を、私は静かに眺めていた。
「美しい……けれど、どこか冷たい壁ですね」
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カテゴリー: ホラー
投稿日時: 2025/4/2 6:20
最終編集日時: 2025/4/3 1:45
青天目 翠
なばため すい