とある日常
いつも通りの朝、いつも通りの道、今日もいつもの一日のはず、そう思って自分の席に着いたがなんか教室が寂しい気がした。いや、気がしたのではない、確かに寂しい。ああそうだ、あいつがいない。あいつの席にはもう誰も座っていない。脳裏に浮かぶたった一人の親友に言われた言葉。わかっている。お前がいなくなっただけで何も変わりはしない。けど、お前がいない世界は時間が止まっているようだ。お前と俺はいつも二人で、誰にも干渉されず、お互いだけを見て過ごしてきた。周りはただの動く背景のようだった。その動く背景に無理やり引きずり込まれたような感覚だ。お前は俺に夢中になることの楽しさを教えてくれた。お前と話してる間に俺はお前の好きな物を好きになっていた。灰色だった世界に光を与えてくれた。忘れないとわかっているのに、毎日生活する度にお前との記憶が薄れていくのが怖い。でもお前を忘れるのが怖くてここから前に進まなければ置いてきぼりにされる。だから前に進まなければならない。それが嫌で嫌で仕方ない。学校の帰り道、気がついたら二人で毎日、泥のように話した砂浜に来ていた。砂浜に落書きをしてみる。波が跡形もなく消し去っていく。もう落書きをしても笑ってくれるお前はいない。何度書いてもお前の声が聞こえることは無い。まだ書き途中とか、こっちの都合は一切気にせず波は跡形もなく消し去っていく。俺は、海から一番遠い砂浜に自分の名前を書く。その隣にお前の名前。俺の記憶からお前と過ごした日々が消えて無くならないように二人でいた証を確かに残した。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2022/12/9 18:36
結城 渚
ゆうき なぎさ
小説家志望、学生です。
小学館ライトノベル大賞受賞する。
そしてアニメ映画化。
夢は日本中を巡りながら小説を書くこと。
小説は空想ではなく経験だ。