理想のお母さん♂見つけました〜貴方と私だけの〜

 ぬるま湯は放置すれば水になる、どんなに足していってもぬるま湯の温度は下がっていく。  お互い恋人がいる同士の、20歳を超えた異性同士の、二人っきりの部屋での食事。一緒に料理をしあって手が触れ合っても、固まる事もない。  ただ淡々と胃袋と、お互いの寂しさを埋めていく。 「草太くんは、大学院まで行くのかな。研究熱心なのは良い事だけど、綾ちゃんの寂しさにも気づいてあげて欲しいな」 「……そういえば知ってますか、草太がいた施設には美優さんが働いている事を。美優さんがいつも会っている友達が……草太だったりして」  食事中の話題にしては下世話すぎる内容に一瞬、山崎さんは凍りついた。持っていた箸が落ちそうになって、慌てた彼は味噌汁茶碗をひっくり返した。  彼のお手製の味噌汁が無惨に、彼のシャツとズボンを濡らした。
綾紀イト
綾紀イト
糸へんが多いペンネームです、心の奥で絡まった糸を解くために書き出しています。 どんなに評価が無くても、私は私の文章が好きです。自分の心を救うために書いています。