あめの音

あめの音
 中学の同窓会が渋谷であった。中三の時のクラスと、となりの組との合同で企画されたらしい。土曜の夜、安っぽすぎないチェーンの居酒屋だ。  10年ぶりか、と亜以子は呟いた。  ふつうに浪人や留年なく4年制の大学に行き新卒で働き始めていたら、今年で会社員3年目になる年だ。同級生の半数ほどはこのコースを辿っている。中学卒業以来、家族で東京に引っ越し、中学のあった地元を離れることになった亜以子には、なんだか居場所がなく感じられた。 「あれ、亜以子じゃない?」馬鹿騒ぎする男性陣を机の向こう側に見やりながら一人でビールを飲んでいたら、後ろから声をかけられた。 「おお、泉っちゃん」  泉はカシスオレンジのグラスを手に微笑んだ。中学のころ彼女とは音楽委員会で一緒で、泉は委員長だった。 「今何してるの?」 「今学生だよ。音大の」
九月架空
九月架空
初めまして。以前書いてた文学系の創作を再開してみました。とりあえず今まで書いてたやつを上げたりしています。九月架空名義でほかのところにもおります。 更新は遅めですが今後書いたり上げたりしていきたいので長い目でみてくれたら幸いです。 創作系アカ@kugatz 日常雑多アカ@mit0919Sahne