第9話その②「Wデイトはショッピング・モールで(花菜とばったり編)」

第9話その②「Wデイトはショッピング・モールで(花菜とばったり編)」
「そういえば、ヒロ、昨日ノリカと会ったんだって?」  電車がオフィス街の並木道側の線路を通過するときに康二が言った。 「そう、買い物の途中で見掛けてさ」 「ほんとに珍しいよね。あんな所で会うなんて」  典香の言うとおり、確かに俺と彼女が学校外で会うのは珍しかった。典香は基本、必要な品物は家に直送してもらうことがほとんどらしく、外出はあまりしないのだという。それにいくらこの瀬鳥町(いま居るのは隣町だけど)が広いだけで殆どは農場か田田に宛てられていて遊び場が限られているとはいえ、偶然にも二日連続で遭遇したことに俺は少なからず驚いていたのだった。 「ってことは、俺に隠れて二人とも密会してたってわけだな」 「おい、変なこと言うなよ」  そうよ、と俺と康二の間に典香が言葉を挟む。 「アンタも、私に他の男に"乗り換え"されたくなかったら、もっとちゃんと私のこと大事にしなさいよね」  典香がいうと、はーい、わかりましたーっ!と康二は何ともいえないテンションで言うと、飲みかけのジュースを飲み干した。よろしい、と典香が頷く。その時の俺の頭にあったことといえば、典香が"乗り換え"と言ったときに、彼女の名前のノリカと、今電車に乗っていることから二重で言葉が掛かっていて上手いなあと思ったことぐらいだったけど、二人を見る限りどちらも気付いてないようだったから、一人胸の中でそれを反芻して、ニヤリと面白がっていた。
阿部野ケイスケ
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)