怪物戦記 Episode2 「Appear and Audible」
緋花はベッドで仰向けになって文庫本を眺めていた。
本のタイトルは『厄災を駆け抜けた勇者』。50年前に起きたとされる「厄災戦」の出来事を今風に解釈したものらしい。
施設のレクリエーションルームには三台のスチールラックが設置されていて、退所者が寄贈した本が並べられている。入所者は自由に読んでいい。小中学生が好むような本は取り合いになるので、緋花はもっぱら人気のない本を暇潰しに使っていた。
一応、本を読んでいるつもりだ。知らない単語があると辞書を引いたりする。おかげで漢字はだいぶ覚えたが、どうしてか内容があまり頭に入ってこない。読み終えて少し経つと、だいたい忘れてしまう。
緋花は腕時計を見た。午後九時五十六分。施設のしょうと消灯時間は中学生だと午後十時だから、あと四分だ。
勉強したいとか適当な理由をつければ、衝動時間は延ばしてもらえる。かなりの入所者が常用している手だが、緋花は使わない。
「そろそろおねむ、緋花?」
自分の足下にいるシロが、ケケッ、と笑う。
「何、おねむって。子供じゃないんだから」
緋花は文庫本を枕元に置いた。この部屋は本来、二人部屋なので、ベッドが二台ある。でも実質、緋花の一人部屋だ。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2024/2/18 3:57
最終編集日時: 2024/2/28 9:17
闇影
小説書くの初心者です。ゆったりまったり頑張ろうと思います。
(少しずつ復帰中、これから投稿頻度はかなり下がると思いますのでご了承ください)