春、満開
この街には、桜が咲かない。桜の木が無い訳じゃない。でも、何故か咲かない。この街で生まれ、この街で育った俺は、二十四年間、桜なぞ見たことがなかった。だが、笑えることに、俺の実家である神社の名前は、『桜雲神社』という。桜が満開で雲のようだ、という意味で使われる『桜雲』には、全くそぐわない。この街の高台にあり、街の人も多く訪れ、親しまれている俺の実家。今日も俺は、青々とした山の上から、街を眺める。
「なんでこの街には桜が咲かないんだ?」
独り言のようにそう呟いた俺の名前は、『桜田 潤』。潤う桜、だなんて勘弁してもらいたい。
「あんたがこの街の桜なんだよ。」
母さんはそう言う。そりゃ俺は桜雲神社の息子だし、そういう表現も納得だが、なんだかムズムズする。
そう思いながらも、俺は神社の本殿をうろついていた。すると、桜雲神社の歴史が書かれてある本を見つけた。もしかしたら、何かわかるかもしれない。そう思い、俺は、ゆっくりページをめくった。
0
閲覧数: 32
文字数: 798
カテゴリー: お題
投稿日時: 2025/4/11 8:23
最終編集日時: 2025/4/11 8:24
澄永 匂(すみながにおい)
連載中の作品は、金、土曜日辺りに更新予定です。
大学生&素人なので文章がぎこちないですが温かく見守ってください。
中学生の頃に作っていた話(元漫画予定だったもの)を書けたらいいなと思い、始めました。