第四章 ~古の魔人~ 9
結局、フリーデ号にはラグナとリィーガーの二人が一時的に残り、ヒューゴとリオの監視を続けることになった。生身の体の手当の方が優先ということである。二人も激しい損傷を受けていたが、どちらにせよセルフィーが手当を受けないことには、二人の体をまともに整備することも出来ない。
ヒューゴとリオが所持していたゲートの開閉装置を操作し、セルフィー、ステラ、ガロンの三人は一先ず渓谷内から脱出した。
調査活動中、拠点に待機していたデュオルはなかなか入ってこない通信にかなりやきもきしていたようだが、全員の無事を知り、まずはひどく安堵の表情を浮かべていた。特に、加入したばかりで危険な活動をさせるつもりはなかったにも関わらず、かなりの怪我を負ってしまったセルフィーに対しては、彼女が恐縮するくらい心配をしていた。
封鎖地区の実効的支配者である二人を落としたことで、八年もの間保ち続けられてきた厳固な沈黙は、ついに打ち破られることになった。解放に向けた確かな足掛かりは間違いなく築くことが出来たはずなのだが、拠点で再び目を覚ましたセルフィーの胸の内には、何故だか言い知れぬ強い違和感が蟠っていた。
夜明け前、巡視員のほとんどが街から消え失せたことを踏まえ、デュオルはセルフィーたちと入れ替わるように拠点を抜け出し、フリーデ号へと足を運んだ。
船内の一室に軟禁したヒューゴとリオの見張りをラグナに任せ、とりあえずまずはリィーガーの案内の元、ザッハークという組織が存在を顕わにした貨物室へと向かった。そこで初めてギガースの姿を目の当たりにする。
「なんと……」
百を超える死線を潜り抜けてきた名将も、目の前に君臨した魔人の名を持つ生物を目の当たりにして流石に驚愕を禁じ得なかった。
「どうやら尋常ではない速度で成長を続けているようだな」
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2024/1/20 3:03
ユー