ハルを思う。
今日は桜の香りがする。
雨で全部散ってしまうのではと心配していたが、かろうじて幾つか残っていた。
「良かった、何とか間に合ったみたいね」
そう言い持ってきた鞄から鉛筆と筆と絵の具、ブック帳を取り出した。
青空の下にピンク色の花びらが5枚、綺麗に開いている。この神社に備え付けてある青いベンチに、自分が座る部分だけハンカチで拭き取ってから腰掛けた。
"この世界を夏に変える前“に彼の作った綺麗な桜を何かに残しておきたかった。
私は静かに白い厚紙に桜の形を少しづつ、ゆっくり描いていく、彼が来るまで。
いつも通り石階段を登り赤い鳥居の前で一礼し、左脚から鳥居をくぐり、なるべく左の道を歩く。
参拝のやり方は知らないが爺ちゃんから「真ん中は正中といって神様が通る道だから歩いては行けない」と聞いた事がある。
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文字数: 2021
カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2023/12/13 10:25
ヨシコウ
目標、1日一つの一物語を。
pixivでも小説書いてます。
同じ名前です。