ハルを思う。

ハルを思う。
今日は桜の香りがする。 雨で全部散ってしまうのではと心配していたが、かろうじて幾つか残っていた。 「良かった、何とか間に合ったみたいね」 そう言い持ってきた鞄から鉛筆と筆と絵の具、ブック帳を取り出した。 青空の下にピンク色の花びらが5枚、綺麗に開いている。この神社に備え付けてある青いベンチに、自分が座る部分だけハンカチで拭き取ってから腰掛けた。 "この世界を夏に変える前“に彼の作った綺麗な桜を何かに残しておきたかった。 私は静かに白い厚紙に桜の形を少しづつ、ゆっくり描いていく、彼が来るまで。 いつも通り石階段を登り赤い鳥居の前で一礼し、左脚から鳥居をくぐり、なるべく左の道を歩く。 参拝のやり方は知らないが爺ちゃんから「真ん中は正中といって神様が通る道だから歩いては行けない」と聞いた事がある。
ヨシコウ
ヨシコウ
目標、1日一つの一物語を。 pixivでも小説書いてます。 同じ名前です。