怪盗ハロウィン

怪盗ハロウィン
「弁償しろっ!このクソガキ」  高級そうなスーツに身を包んだ若い男が、往来で怒鳴っていた。  相手はハロウィンの仮装をした子供。  どうやら、男はデートの最中で、子供の持っていたお菓子が男の服を汚したらしい。  大の大人がみっともない。今日はハロウィンじゃないか。  とても見ていられなかった私は、男を宥めると、クリーニング代を胸に突きつけて子供を解放してやった。  渋々といった顔で引き下がった男と別れてから、暫くして、背後で「無い!無い!」と叫び声が聞こえた。  振り返ると、少し離れた先で、さっきの男がスーツのポケットを必死に探っている姿がちらりと見えた。  私は、手の中の箱に目をやり、それから、小さく笑った。  
泥からす
泥からす
短くて、変な小説を書きます。ノンジャンルです。