(没作)天国への扉

「帰ってええぞ」  これは大仕事をしくじった後に組長から言われた一言だ。指を詰める覚悟で奴の前に立ったのに、これで終わり。  困惑した気持ちのまま出口へ向かっていると、後ろからぼそっと声が聞こえた。 「帰れるもんならやけど」  これで全てを察した。俺は帰り道に消される。  外に出た瞬間から気が気でなかった。車に轢かれるのか、通り魔に遭うのか、単純に撃たれるのか。  周りを見渡しながら、俺は早足で家へ向かう。仕事柄家のセキュリティはかなり手厚い為、入れさえすれば安全と言える。  俺は善人だ。人を傷つけたことすらない。引き受けてきた仕事はすべて合法であり、違法行為はしたことが無い。それなのに死ぬなんて、そんなのは嫌だ。  ついに辿りついた、俺が入れる唯一の安全地帯へと続く、楽園への扉に。
ノラ戌
ノラ戌
黒鼠シラのサブです。 アイディア掴むための、行き当たりばったりな小説投稿する予定です。 ちゃんとしたのは黒鼠シラのアカウントで