穴ある阿呆と秋田の理論
「二度目の人生を歩めるなら、たぶん、私は穴のあるドーナッツになっているさーー」
友人のひょんな台詞を酒の席で飲み込んだ俺は、とかく、純粋に信じてしまった。
その馬鹿なドーナッツ理論を翳した男は、俺の友人だった。俺の友人の秋田は、都道府県と県庁所在地を並べたような男で、たまげた如く米の炊き方が上手い口の回る奴だった。
非常階段からの三段目、なんなくそいつを飛び越えて、秋田は一言。ごめんね、青年よ、私は生き急いでいるちょいワルおじさんなんだと言った。そのとき、初対面の俺という阿呆は、その友人になるかもしれない男の脛を蹴りあげて。そう、こう叫んだ。ーー口先から生まれてんのか、くそったれと。
とにかく、奴はそれはもうふざけた秋田だった。秋田という名前が動詞に様変わりするほど、秋田が秋田していた。
その台詞が、馬鹿正直にレモンサワーに飲まれたのは、曇り行き怪しい仕事終わりだった。俺は現場で監督業務の点検不足でどやされ、秋田は口が災いし仕事がおじゃんになった日だった。示し合わせたわけでも、待ち合わせもない。赤羽の暖簾をくぐれば、奴がレモンサワー片手に、ざまぁみやがれ、私が一番だと叫んでいた。暖簾を下げた。もう一回、あげた。まだ、秋田はレモンサワー片手に、椅子の上に乗り、大将に絡み酒をしている。俺はポケットの中の携帯電話の時間を見た。残念、電車はまだ来なかった。秋田が、俺を見つけて、にかっと笑う。不覚にも、おうと返事してしまった。俺という阿呆は、秋田の腕を振り払えずに、肩を組まれ、どんどん酒を注がれて。あぁ、感無量、むちっとした美人な店員の尻を見て、秋田と大喜びする秋田をやっていた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/3/25 13:29
西崎 静
コツコツ書いていきたいと思っております。よろしくお願いします!成済