兎の牙毒

皆は十二支を知っているだろうか…争い競い合う動物達の物語、話を聞かず騙された猫はなれなかった神の使者である。この物語は、そんな十二支に毒された一匹の黒猫の話である。 息が…詰まる、肺が凍る、白い雪原が赤く染る、その場を白兎の瞳の様に赤く染めていく、空は白くしんしんと降り積もる雪が更に僕の目を塞ぐ、横倒れる2人の少年少女を軈て、埋め尽くすのだろうそんな死に際諦める様に青年はこんな事を思う。 “あぁ僕は死ぬんだ、でもこんなに美しい死ならまだ老衰よりマシか。” だが彼には心残りがある。その心残りに、共に倒れる横の少女に手を伸ばす。 “もし、もしこの場に天使が舞い降りるなら、頼むから…頼むから。” 最後の力を振り絞り言霊を放とうと喉から最後の言葉を放つ。 「隣の少女を助けてくれ」 青年の頬に涙が伝う、生気の感じぬ冷たい涙は雪に落ち、気温でやがて凍るだろう、背後から感じる、その存在に気づくまで、僕はひたすらに見ず知らずの少女の生存を祈った、だが狂った神の使者はどう言う訳か少年を助けた、僕は確かに見たんだ。 白い髪の小さな少女を、現実離れしたワンピース姿の少女を、少女は青年に一言こう助け舟を渡す。『助けてあげる、代わりにこの子貰っていいかな?』助けてくれるならなんだってするさ、だけど頼むから、助けてあげてくれ、僕じゃなく、その少女を。
マロスク
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