花盗人

花盗人
また、入院することになった。 もう慣れているからなんとも思わない。ただ、またかという諦めにも似た感情が一瞬胸の内をよぎっただけ。別に死にそうなほど病状が重いというわけでもなくて、昔から喘息が少し、ひどいだけ。    見慣れた病院に帰ってきて、見慣れた同じようなベッドで眠り、見慣れた病室で味の薄い食べ慣れた食事を摂る。こうやって入退院を繰り返して、変わらぬローテーションを繰り返して、そうして死ぬのかと思うとつまらない人生だなと思う。  入院から何日か経つと、高校のクラスの人からお見舞いの言葉を連ねた色紙が届いた。ざっと一面を目でなぞって、ごみ箱に捨てた。 「あの…」 突然に、隣から声をかけられて心臓が跳ねる。 僕の部屋は個室ではない。当然他の人もいるわけで、カーテンを閉めなければこちらの行為など丸見えだ。 「それ、捨てちゃっていいんですか?」 「え…あ、はい」
にょ
にょ