瞳は何も物語らない

3月。その日は雨がザーザー降っていた。 「せっかくの卒業式に、雨か…」 いや、でも私は雨女だし良い事あるかも、行事がある日に限って雨も降りたがるから。だが…好きなあの人は、雨の日にわざわざ来ないだろう。そう考えると何だか心にまで雨が降るような気がした。 「手紙、送り過ぎたから嫌われたのも同然だから仕方ない」と思うより他ない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 結局、好きなあの人は来たらしい。私は緊張で心臓が壊れないように頑張って胸の高鳴りを抑えた。「声が、聞こえる。」 卒業式で名前を呼ばれるまで待たなければならない苦痛な時間に、好きなあの人を考える余裕は無い。早く立ちたいのに立つことすら不可能なこの時間。「友達はどうしてるかな〜」と、考え事をしていれば腰の痛みは無くなると思った瞬間に「牧野優花」と呼ばれた。タイミングが悪すぎる。
桜ユウ
桜ユウ
初めまして,悲恋小説を書かせて頂く桜ユウです🌸