トンボの子
仕事帰り、僕は原っぱに挟まれた道を歩いていた。辺りは夕陽で赤みがかっていて、トンボがたくさん飛んでいる。
トンボを見上げながら僕は、子どもの頃のことを思い出した。
僕はよくこのあたりで虫捕りをして遊んでいた。バッタとかカマキリとかチョウとか。そして、秋になればトンボを捕まえた。
秋ごろのある日のこと。その日も、いつものように原っぱに来ると、知らない女の子がいた。
その子は、飛んでいるトンボを追いかけながら人差し指を上げていた。
「動いたら止まんないよ。」
僕がそう言うと、
「うるさい。知ってる。」
とその子は少しむすっとして言った。そして立ち止まると、指を上げてじっと動かなくなった。
0
閲覧数: 26
文字数: 712
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2021/9/19 4:01
須玖漠雨
小説書いてます。
Twitter : @sugubaku