小人の人面瘡

「おはよう」 ある朝、目が覚めると小さな人のような形をした影が私の鼻の上に立っていた。「あ、起きた」とその小さな人が言うと、どこかへ走り去っていった。変な夢を見たなぁ。と起き上がって、布団をしまい、身支度をして会社へ出かけた。 翌朝、また「おはよう」と聴こえて目が覚めた。今度は「おはよう」に返事をするように「おはようございます」ともう一つの声が聴こえた。パッと目を開けると、私の鼻の上で、人型の小さな影が二つになっていた。 「いたんですね」 「ええ、ついさっき」 と何やら会話を交わしていた。今度ははっきりと小さな人が二人いた。 私は寝ころんだままの姿勢で「これは一体なんなんだ?」とその二人に訊ねると、その二人の小人は慌てて私の鼻の穴に入って隠れた。私は鼻息を勢いよくふーと吹くと、二人は私の体にくっついたまま鼻の穴からお腹のあたりまで滑っていった。なんだこれ、気持ち悪い、と私はお腹に移動した二人を眺めていた。お腹の上を走り回る小人の一人を指でつまむと「ぎゃ」と声をあげた。私も自分の体の感触を指先に感じて、余計に気持ち悪くなった。 「これ、なんだよ」とそのつまんだ小さな人に訊ねると「ぐぅぅぅ」と声を出せないようだったので、少し指先を緩めた。 もう一人の小人が私に祈るような格好で「あの、すいません。すいません」と言っていた。 「人面瘡ですよ」とつまんでいる側の腕のひじ辺りから声が聴こえた。もう一人いたようだ。ひじの辺りを見ると、小人が洋服を着て、眼鏡をかけていて紳士のような恰好をしていた。その紳士の小人が私のひじの辺りから、話しかけていた。
新規ユーザー