開幕

開幕
私が変わり果てたのは、いつか見た1つの劇だった。 内容は面白くなく、観客こそ少ない潰れかけの劇場だ。そんなところに連れられたところで育ち盛りの子供に眠ることを促すだけだろうと思っていた。 実際に周りの友達はみんな眠っていたし、私も眠かった。 目に眠気を飛ばす眩しいくらいの光が入ってきたのはその時だった。特にセリフを多い訳では無く、言い方は悪いが主演の引き立て役というような町娘が泣いたのだ。 あの人の涙は綺麗だった。5年経った今でも瞼に焼き付いているほどに。 そこから食い入るように彼女だけを見ていた。いや、彼女しか見ることができなかったのだ。 主演と謳われドヤ顔で演じる大根役者より、彼女の方がよっぽど魅力的かつ妖艶で、正しく主演にふさわしい人だと心から思った。
はの
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塵と海月。 多分恋愛系ばっか書いてる人 開始 2023/09/13