第3回NSS ふたご

俺と兄は双子だ。生まれた日も背の高さも同じなのに、両親の離婚で、別々に暮らすことになった。兄は父の元へ、俺は母と残る。俺たちには選択肢なんてなかった。決まった日の夜、兄はいつもより無口だった。テレビでは、ふたご座流星群が見頃だと言っている。まるで俺たちをからかうみたいで、俺は少し腹が立った。 ベランダに並んで座ると、冬の空気が肺に刺さる。流星が続けて沢山落ちていく。兄は空を見たまま言った。 「双子ってさ、離れても消えないんだよな。ふたご座の元になってるギリシャ神話の双子って切っても切れないぐらい仲良かったんだってな」 俺は返事をしなかった。胸が詰まって声が出なかった。 置いていかないで、って叫びたかった。 それ以外の願い事なんて浮かばない。ただ、この瞬間だけが長く続けばいいと思った。 別れの朝、兄は靴を履きながら振り返り、笑って言った。 「同じ空見てたら、それで十分だろ」 ドアが閉まったあと、寂しさは確かに残った。でも夜空を見上げるたび、胸の奥が少し暖かくなる。双子の片割れは、今もどこかで、同じ星を見ている気がしたから。
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
綺麗事が救いにならない夜の話。 正しさに置いていかれた感情と、 救われなかった青春の残骸。 優しい言葉ほど、いちばん痛い。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿