小学生

三面鏡  私はある女の三面鏡に映された絵を見たことがある。右の鏡にはアンデルセン童話の姫に憧れた幼女だろう。  鏡の鏡の奥にははごっこ遊びに使う小道具で溢れかえり、彼女の左の手には五尺くらいであろうおもちゃのステッキを持ち顔をクシャッとした黒目の多い目が潰れるような満面の笑みで 「お城に住みたい」なんて今にも良いそうな顔をしている。  これくらいの歳の幼女であったらこんなことをやっても通常の大人だったら笑みを浮かべているだろう。  左の鏡には、少女と顔が似ているものもバッサリとまるで男のように髪を切った髪と黒縁の眼鏡をかけている何かしら呆れた笑みを浮かべている少女のえだった。その呆れた笑顔は年頃の人間が出す特定のオーラそのものだった。  しかし正面の鏡に写っている姿はえも言えぬほどに大人の目をしていた。正確に言ってしまえば少し曇っている目といってしまってもいいのかもしれない。女の顔は薄く笑い顔は引きつった笑みを浮かべ甘酸っぱさは極めて少なく道化師のか面を被ったような笑みを浮かべていた。
室永 秋太郎
室永 秋太郎
11月17日生まれ