Joker boy

モルカディアの旧市街広場は、朝から湿り気を帯びた熱気に包まれていた。 石畳は夜露に濡れ光り、この街の長い歴史の中で幾度となく流された血の痕跡を物語っている。そして今、また新たな血がその表面に供給されようとしていた。 広場の中央に組まれた処刑台の上で、黒い頭巾を被った男が静かに斧を担ぐ。ざわめき立つ群衆の生々しい熱狂が肌を刺した。野次と歓声、罵声が入り混じる中、ひときわ高い子供の泣き声が響いたが、それもすぐに、広場の隅で煙を吐き出す屋台から漂う油の匂いと、朝から発酵し始めている汚物の悪臭に飲み込まれていく。生暖かい空気が重くのしかかる。 処刑はすでに数人済まされており、広場の一角には、布を被せられた血の滲む塊がいくつも転がっていた。ルカは広場の片隅に置かれた、粗末な木製の椅子に腰掛け、朝から煙草を燻らせていた。煤で汚れた指の先から立ち上る紫煙が、朝日に透けてゆらゆらと揺れる。この光景は、彼にとって日常の一部だった。広場での公開処刑は、モルカディアの秩序を保つための見せしめであり、同時に宮廷直属の検死官にとっては、新たな仕事の供給源でもあった。人の一人や二人死んだところで、どうということもない。 「今日の得物は上等じゃねえな」 横で同じく煙草を吸っていた同僚の検死官、ディオンがぼそりと呟いた。彼の太い指が煙草のフィルターを潰す。ディオンはルカよりも一回り年上で、酒と女と賭博に金を費やす典型的な男だ。 「金になるなら何だって上等だろ」
さきち
さきち
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