代行業者

昔は、龍は祀られていたらしい。 だが、今は違う。 半世紀以上前、突如として現れ、東京を火の海に変えたアレは、神を体現したものとしてではなく、少なくとも人々の憎悪を凝縮したものとして、人類が結託する口実となった。 今の時代、街に出れば嫌でも目に入ってくる「龍殺し」の代行会社は、その出来事の恩恵とでも言うべきだろうか。ただ、当の龍は半世紀前の大災害を最後に姿がみえない。 どこで何をしているかもわからないそれに、 ある者は恐怖を、またある者は憎悪を募らせていた。それの捌け口として、特に活動をしているわけでもない半分詐欺と言うべき代行会社が所狭しと事務所を連ねているのである。 もっとも、大災害を経験した世代が高齢化し、次世代にバトンを渡そうとしているこの頃は、業績があまりいいとは言えないのだが。 そんな潰れかけの代行会社らの一員として私は存在している。大学を出た頃には鬼才だのなんだの囃し立てられていたものだが、結局のところ周りが冷めてしまってからはぱったり音沙汰がない。こんなものだろう。 「おい、そこ掃除終わったか?」 この偉そうな口調で喋る人物は、私の大学時代の後輩で、今の上司だ。世の中何が起こるかわからないとよく言われるが、まさかこの劣等生に抜かされるとは思いもしなかった。
石焼鍋
石焼鍋
高校2年生。 学生ゆえ作品の公開は 単発、連載にかかわらず不定期です。 作品を読んでいただき、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。