お題 トマト
「実はトマトじゃないんだ、おれ」
まな板に載せられたナスが唐突に呟いた。末期の悟りというやつか、いままで重ねてきた嘘だったけどここに来て続けることに無為を感じたらしい。
「知っていたよ。そこに麻婆茄子の素が転がっているからね」
本当のことを言うと、ぼくはトマトを見たことがなかったから彼の自己紹介を間に受けていた。ように見えるよう努めていた。
彼の素肌とパッケージの色合いが近かったから薄々勘づいていたものの、同じナス科だし大まかには一緒だと気づかない振りをしていたのだ。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2022/6/26 10:12
最終編集日時: 2022/6/26 10:13
かじか
底辺低空飛行労働者。下層階級出身なので日本語はあまり上手くありません。なにとぞよろしくです