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「なあユウヤ、オリジナル・ラヴの新曲聴いたか?」
一限目の現代文の授業が始まる前の朝のクラスメイト達がやたらに騒つかせて浮かれているこの時間、いつも通り元気のある声でショウタは本を読みながら机に置いたウォークマンを聴いているユウヤの肩を叩いた。
「なんだ、ショウタ君か。びっくりした」
何?とイヤホンを片方外して、ユウヤはショウタの方を振り返る。
「夜をぶっとばせ、って曲なんだけど、凄いカッコいいんだよ。ユウヤ知らない?」
「なんか、この前CMで流れてたやつ聴いたかもしれないけど、どんなのだっけ?」
ユウヤが聴いていたのは、ピチカート・ファイヴのオードリーヘップバーン・コンプレックスという曲が収録されたカセットテープだった。これだよ、今持ってるから、ちょっと聴いてみな、とショウタはユウヤのウォークマンの中身を取り出させて、持っていた彼のカセットテープに入れ替えて再生した。ユウヤはしばらくショウタとそれを聴き続けて、いい曲だね、と呟く。だろ?とショウタが嬉しそうに笑みを見せる。お前なら好きそうだって思ってたんだ。
「でもさ、この曲って、元々ピチカート・ファイヴの曲じゃなかったっけ」
そうだっけ?とショウタは首を傾げる。でも、こっちはこっちでカッコいいだろ、と片方のイヤホンを耳に入れて、ユウヤと並ぶようにして曲を聴いた。その曲はまるで高速道路をドライヴしている最中のような疾走感と、真夜中の輝く夜空のような爽快感が入り混じったようなメロディに聴こえた。
「ユウヤこそ、何聴いてんの」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/10/19 8:11
最終編集日時: 2025/11/3 3:59
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
アベノケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)