遠い足音

お題「気遣い」  彼女の自宅の下駄箱に、見慣れないブランドロゴの入ったシューズボックスがあることは知っていた。  それがスニーカーではないことも。  だからといって、その靴の中身が黒のハイヒールだったなんて予想はしていなかった。  う、わっ……⁉︎  カツ、カツ、と上品に音を立てて彼女は颯爽とこちらに向かってくる。遠くから俺を捉えた彼女は、ヒールのせいか駆け寄ってくることはなかった。早足になるわけでもなくひらりと控えめに手を振る彼女に、俺のほうが待っていられない焦ったいわずか数メートルに、たまらず俺が急くように詰めてしまった。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く」「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜 ※作品は全てフィクション ※無断転載、AI学習禁止