第8回N1 Third

第8回N1 Third
一目惚れした。運命の人だと思った。何万回も咀嚼された陳腐な表現だったが、今の気持ちを表す言葉はこれしか知らなかった。 「あの、好きです」 「急になんですか」 名前も知らない、初対面のその人は迷惑そうな顔をしてこちらをじろりと見つめてきた。大学の講義室でのことだった。大学生にしては珍しい黒い絹のような髪、白く滑らかな肌、潤った薄紅色の唇。一人で座っていたその人に目を奪われた。 「急にごめんなさい。あまりにも綺麗でつい」 「はあ、そうですか」 「迷惑じゃなければ隣いいですか?」
史
ふひとです