コップ

コップ
 コップに溜まる水は、放っておくと腐るから捨てなくちゃならない。だけど滴る水が止まらないときは、受け止める必要があるから、中身を捨てる暇がない。  あとどれだけくらいの水が入るのか、気を配れる人はあまりいない。いつか溢れてから初めて、もう入る余地が無かったんだってことが分かるんだ。  無限に入るコップなんて無いって、そんな当たり前に気付けない。  中身の腐ったコップや、割れたコップを持て余して、だけど捨てることもできなくて、つぎはぎだらけで歪なまま、溢れそうになる水をなんとか受け止めようとする。  痛々しい努力をしながら、なるべく取りこぼしたくないもの必死集めて、なんとか生きている。  ゴミ捨て場の砕けたコップを見かけて、そんなことを考えた。
いずさや
いずさや
Twitterで140字小説を毎日更新しています。 こんな話が読みたい!というリクエストがあれば出来るだけお応えしてみたいので、コメント等に書いて頂けると嬉しいです。 好きな作家:桜庭一樹、星新一、伊坂幸太郎、滝本竜彦 Twitter: https://mobile.twitter.com/saya_works