コップ
コップに溜まる水は、放っておくと腐るから捨てなくちゃならない。だけど滴る水が止まらないときは、受け止める必要があるから、中身を捨てる暇がない。
あとどれだけくらいの水が入るのか、気を配れる人はあまりいない。いつか溢れてから初めて、もう入る余地が無かったんだってことが分かるんだ。
無限に入るコップなんて無いって、そんな当たり前に気付けない。
中身の腐ったコップや、割れたコップを持て余して、だけど捨てることもできなくて、つぎはぎだらけで歪なまま、溢れそうになる水をなんとか受け止めようとする。
痛々しい努力をしながら、なるべく取りこぼしたくないもの必死集めて、なんとか生きている。
ゴミ捨て場の砕けたコップを見かけて、そんなことを考えた。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2022/3/21 13:31
最終編集日時: 2022/3/24 13:38
いずさや
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