死に場所散歩
その日は朝日が悲しい程に綺麗でした。地平線の向こうに見えるまんまると大きな橙色のそれは眩しく、力強く、冷えた砂浜に座る私を含め、周りを暖かい光で優しく包み込みました。早朝の海辺で泣きながら見たあの景色は今でも鮮明に思い出せます。
私の家から海は二時間ほど歩けば着きました。自殺の名所があったので、そこに行けば良い場所があるだろうと考えたからです。その時の私は前日の夜に準備を終えていて、今までとは比べ物にならない覚悟が出来ていました。
なんだか今日は確実な気さえしていて、願望が叶いそうだと少しばかりの妙な自信がありました。思い残す事も特には無く、不思議なほど清々しい気分でした。もう何も背負わなくて良いと言うのは何とも身軽。やっとだ、やっとこの重たい物を捨てて良いのだと言う喜びさえ感じました。
たとえ失敗に終わろうとも何度も行うつもりで、軽率に最期の場所を見つけに出かけました。
今日決められればそのまま逝こう。長引かせたくない、今日だと嬉しいなと思っていました。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2024/3/31 4:18
最終編集日時: 2024/4/7 1:30
二重毛布