12/25『ワタシに願いを』
毎年定番のものから新たに発表されたものまで、冬の大きなイベントが題材になっているそれらが街に流れ始めた。
きっとこないであろう“キミ”を待ってみたり、クリスマスキャロルが流れるころに思いを馳せてみたり、プレゼントよりも“貴方”が欲しいとせがんでみたり……なんのかんのシチュエーションは違えど、“恋人たち”に向けた楽曲が多い。
ワタシ的にはムーディーなものよりアップテンポで楽しげなものが好きだ。気分が上がるからね。
ワタシ――こと流れ星の精は、流れ星を渡っては人々の願いを叶えてきた。
落ちていく幾つもの星を渡っていたけれど、あるとき思った。『ちょっと疲れたな』って。
だから、なんだか目立っていたこの星に留まることにした。この商店街でクリスマスイベントを行う際に必ず出される大きなモミの木。そのてっぺんで輝く星に。
ここなら転々と移動しなくていいし、お願いする人との距離が近いから願い事が聞き取りやすい。
『願いを3回唱えれば叶う』と言われているのは、3回くらい願ってくれないとワタシのところまで聞こえないから。距離遠いし速度早いしね。
クリスマスじゃない時期は、商店街の入口上部に設置されたからくり時計の中、魔法使いが持っているステッキの先に付いた星に移動する。大きな星が季節物だなんて知らなかったんだもの。
朝9時から夜7時まで、3時間おきに仕掛けが動くときにも願いが叶えられるけど、知らないヒトだらけで正直暇だ。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2023/12/25 11:00
小海音かなた
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小海音かなた(コミネ カナタ)は見習い小説家。プロになるために小説を公開したりコンテストへ応募したりしています。
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