『優しい足音と空の果実たち』

『優しい足音と空の果実たち』
村では、月がひび割れるたび、 足音の実がぽとぽと落ちてくる。 硬いのは赤いリンゴみたいで、踏むと空が鳴く。 やわらかいのは透きとおった桃のようで、踏むたびに夢のかけらがこぼれる。 その夜、空にできた階段は、 雲じゃなくて眠るクジラの背中だった。 村人は硬いリンゴを持ち、カンカンと背を叩いて登っていく。 僕はやわらかい桃を選び、静かにそっとついていった。
エデン。
エデン。
小さい頃からお話と詞を書くのが好きでした。 過去に書き溜めた物語や、最近書いた物語を載せていきたいと思います。 イラスト/ノーコピーライトガール様