沈んだ輪郭

彼と彼女は、互いを深く愛していた。 少なくとも、そう信じて生きてきた。 彼女はいつも彼の言葉を欲しがり、彼の気持ちを欲しがり、それは次第に彼の中にあるもの全部を手に入れたいという渇きに変わる。 彼はそれを愛情だと思い込もうとしていた。 最初は心地よかったし、支えられている気がしたから。 けれどある晩、彼女は言った。 「あなたが何を考えてるのか、どれだけ感じてるのか、どこまでがあなたで、どこからがわたしなのか……全部ひとつにしたいの」
如月凪央
如月凪央
如月 凪央(きさらぎ なお) 日常の隙間に落ちる感情を書いています。 派手な展開より、ひとことの沈黙や、言えなかった一言の方が物語になると思っています。 恋愛は好きです。 綺麗なだけじゃ描けないところまで含めて。 更新は不定期。 書けるときに書きます。 読んでくれた人の時間を少しでも奪えたなら、それで十分です。 いいねや感想は励みになりますが、義務ではありません。 読む人も書く人も自由であってほしいので。