誕生日の旅
今日は誕生日。
一年に一度しかない大切な日。
放課後、掃除当番をクラスメイトに代わってもらい、急いで学校を出た。今日は私の大親友、琉夏【るか】も一緒。
左側に見える宝石のように輝く海を横目に見ながら全速力で走った。今日の行き先はもう決まっている。喫茶店だ。その喫茶店は学校から歩いて三十分くらいのところにある。優しくて、とても気さくなおばあちゃんが営んでいて、お洒落で昔ながらのレトロな雰囲気のあの喫茶店は私と琉夏のお気に入りの場所だった。暑くて溶けてしまいそうな日も、寒くて凍ってしまいそうな日も、私が英語のテストで二十五点を取って泣いた日も、琉夏に初彼氏ができて二人でお祝いをした日もいつもあの喫茶店に寄っていた。あそこにはこんなにもたくさんの思い出が詰まっているのだ。
住宅街を抜け、町の商店街を通り過ぎてすこし進むとあの喫茶店は見えてくる。もうそろそろで到着だ。
ドアの前に立ち、息を整える。ポケットの中のハンカチで汗を拭いて、深呼吸を一回。最近はあまり来れていなかったけれど、おばあちゃんは私たちのことを覚えていてくれているだろうか。ジリジリと鳴く蝉の声と遠くに聞こえる波音が少しうるさい。久しぶりだからか不思議と緊張して、鼓動が早まるのを感じた。私は勇気を出して思い切りドアを開けた。
すると、“カラン”と、とても懐かしい音がした。その音と同時に店内の冷たい空気が押し寄せて来た。涼しい。さっきまでの暑さが嘘みたいに思えた。そして奥からおばあちゃんが出てきた。相変わらず元気そうだ。
「はいはい、いらっしゃいませ…って、小雪【こゆき】ちゃん、小雪ちゃんかい…?」
どうやら私たちのこと、覚えてくれていたらしい。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/12/9 9:29
最終編集日時: 2024/2/22 10:26
雨瑠(うる)
はじめまして!雨瑠(うる)と申します!!受験終わったばっかりの新高1です🥲
小説は好きですが書くのは初心者なのでなにとぞよろしくお願いします。ちなみに汐見夏衛さんの本が大好きです!