十八、彼女の提案
彼の気持ちも理解出来ず、蓮君の行動も理解出来ず、モヤモヤとしたまま私は先程藍さんに指定されたカフェに来ていた。遅い時間に会うのは胎教に悪いのでは?と聞いてみたが、藍さん曰く、
「全然大丈夫! 全然平気! 悪阻もないの!」
と頗る元気だ。藍さんはそのカフェには入らずに、外で待っていて欲しいと言っていた。
カフェは直ぐに見つかった。私は少し離れた所からカフェを見ていた。白を基調とした外観と窓から窺える内装は、とてもナチュラルで愛らしい。甘くなり過ぎず、あくまでナチュラルだ。外壁下には沢山の素焼き煉瓦のプランターが置かれていて、アイビー等の蔓ものが植えられている。
何時しか喧騒を包み込む様に夜が降りて来た。店内からの甘いスイーツの香りが鼻を擽る。よく見ると入り口の扉に掛かった木製の板に、「焼きドーナツ、テイクアウト出来ます」とある。絶対に買って帰ろう。仕事帰りの私のお腹はかなり空いていた。
それにしても藍さんは色々なお店をよく知っている。仕事柄、という訳ではなく、好きなのだろう。街を散策し、気になったお店があれば入ってみる。そう言った事が好きなのだ。私は藍さんが何時も言う様に、
「可愛いお店を見付けたから、直ぐに入ってみたの!」
なんて事は出来ない。私が藍さんの様な性格だったらもっと早くに彼の店を見つけ彼を知っていただろう。私の人生はもしかしたら損をしているのかもしれない。でも今だから、今の私だからこそ彼を好きになったのかもしれない。
「ゆりちゃん!」
高く通る明るい藍さんの声で私は我に返った。商店街の方を見ると、藍さんが大きく手を振りながら満面の笑みで近付いて来た。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/6/7 13:50
最終編集日時: 2024/6/13 23:17
アナ.
伝えたい思いがあります。
沢山の方々に届きますように。