迷走列車(ミステリー)
迷走列車
茶のマントコートーを羽織り、その血色の悪い青い顔したひとりの男は電車に揺られ、円形な路線上の各駅に降りてはその駅舎を訪れ、落とし物として届けられている傘を見せてもらう。いつも色々な色、形の傘を並べられる、ただどれも違った。
男は今も揺られ旅をしている傘を探して……。時には同じ駅にも何度も訪れて駅員に飽きられても飽きられても……。
時には気違い扱いも受けてしまう。
そんな中にも心優しい女性の駅員さんに当たり、昔の落とし物リストの中から同じ様な傘を誰かが間違えて持ち出していないかなどを色々と細かく調べてもらったりする。
でも見せられた細いリストの中にそれらしき傘の手がかりは無く、そしてイラつき、優しい駅員さんに声を荒げてしまったりする。
そしてまた列車に揺られる。時には駅前の飲み屋で同じ様に揺れている酔っ払いから得た不明確な傘の目撃情報を、藁を掴む様な心持ちで、本路線駅から少し離れた温泉街へ、ガーガービーと不安気な音が鳴る小さい一両列車に乗り変え、暗いトンネルを抜け向かう。その車内は奥の角席に杖を着き首をカクカクと揺らす老客と、揺ら揺らと灯しが揺れる吊らされた小さいランプ、それにブザーが一つ付いているのみだった。
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文字数: 1074
カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2025/10/18 9:39
最終編集日時: 2025/10/19 11:14
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
仙 岳美
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