とある奥さんからの依頼 二
約束していた魚料理店前でスマホを弄りつつ待っていると、眼鏡を掛けた男がすぐ隣に来る。見覚えのある髪と眉に気を取られて思わず顔を向けると男はニヤニヤとして「ブルーフラワーさん?」と粘ついた声を出した。
「あっ……はい! もしかして森山、さん? イケメーン!」
飛び上がって喜んで見せる。此はハニートラップに弱いぞと思い肩を寄せてみると森山は乾いた唇を歪ませて笑っている。既に、眼が爛々としていた。
「此の店ほんと美味しいんで! 入っちゃいましょ」腕を組むと、店に引き摺り込む。木の扉を引いて開けると暖房の熱風に晒され、鰻の匂いがした。広々とある畳と木の柱があり、机の端には箸が置かれている。店員からお冷を貰ってメニュー表を見ると、香りの通り一番人気の鰻や鯛の料理があった。
「どれにしますう? 鰊は無いみたいですけど」母国でよく食べていた塩漬けも無いらしい。だが鮭はあった。森山はアルフィーの胸を凝視しつつ適当に頷く。
「うーん、悩むねえ。鰻にしちゃおっかな? ブルーフラワーさんはどれがいい?」
揺れている胸と会話しているのか目が一ミリも合わない。取れかけている気がして胸を触りつつ押し付けていると森山の目は細くなって頬肉で押し上げられニンマリとして来た。
「あー、なら鯛で! あと「さん」って付けなくて良いですよ」
「ブルーフラワーちゃん? じゃあブルーフラワーちゃんも僕の事森山って呼んで良いよ」
「森山君?」あざとく上目遣いした。昔、彼女に同じ仕草をされて騙された記憶がある。五万くらいの化粧品やらを買わされたと思えば電話で別れを告げられた。悲しい過去である。森山はまんまとそれに嵌って赤面した。縋りつくかと思えば照れ臭そうに笑って「そういえば」と切り出した。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/12/28 14:18
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
愛染明王