水槽と赤
金魚をすくいました。夏祭りで、一回五百円だったんですが、わたしがあまりにへたくそで、屋台のお兄さんがおまけして、一匹だけ、もらいました。その日のうちに近くのホームセンターで、金魚鉢を買いました、思っていたより値段がして、壊さないように、割らないように、大事に抱えて帰りました。金魚鉢を洗って、水を入れて、水草を入れて、それから金魚を一匹、金魚鉢に入れました。金魚の赤が映えて、陳腐なもんですが、綺麗だな、なんて思いました。
金魚を飼うときは、毎日水を替えなければいけないようで、水替えのときに金魚を、避難させる鉢がない、と思って、あわててバケツを出してきました。金魚は思ったよりも繊細ないきもののようで、地に立ってから、がさつなわたしは、すぐに死なせてしまうんじゃないか、なんて少しだけ、不安になりました。どうやら、金魚鉢が大きければ、水替えで、金魚を避難させなくてもすむようなので、またホームセンターで、きのうよりも大きめな、ほとんど水槽のような、鉢を、買ってきました。その金魚鉢に移して、水草に加えて、砂利も入れます、なかなかに雰囲気があります。ただ、大きめともなれば、金魚の色が抑えめになります。寂しいな、お前も寂しかろう、そう思った私は、金魚を数匹、買って、鉢に入れました。綺麗な水に、天然の赤、よく考えられたものです、これは風流だろう、わたし好みの景色でした。
数日が経ちました。金魚鉢の水替えは毎日行っています。あれから不思議と、何をやるにしても金魚鉢を見ることを優先してしまうんです。わたしは昔から寂しがりやだったので、ペットみたいなやつができると、すぐに構いたくなるんだろう、と思っていました。ですが、仕事の休憩中にも、金魚鉢を観たくなるんです、あの色はどんなのだろう、ああ、今はどうだろう、なんて考えてしまいます。幸い、まだ仕事には支障はありません。金魚はいまだ綺麗な赤で、落としたエサに食いつきます。そのひとくちが愛らしく、いきものを飼っている、そんな感覚がします。
金魚を飼ってから数週間、経ったのでしょうか。金魚というのは儚いもので、わたしが想像していたよりもか弱いいきものです、今日、九月十日午前十時十二分三十五秒、わたしがはじめに飼った、屋台でもらった金魚が力なく沈みました。赤はそれでも綺麗でした。その金魚は、丁寧に沈めました。わたしは水槽を見ている時間が毎日少しずつ、増えていきました。水槽の水草は、少し汚くなったので、新しいものと入れ替えました。赤が少なくなったので、また金魚を入れました。水槽は、水の入れ過ぎで、少し膨らんだのでしょうか? たぶん気のせいだと思います。
0
閲覧数: 147
文字数: 1585
カテゴリー: ホラー
投稿日時: 2026/9/5 13:39
最終編集日時: 2026/9/5 13:59
かきあげ
バナナです