RED RUM
蝉の抜け殻から生まれる胎児、鳩の嘴に戯れる飛鳥花、茶柱の中に聳えるビジネス・ビルディングの群生、青空のカクテル・ウイスキー、種子島のベルリン・ウォール・クラッシャーズ・ガン、跳べよ鴎よ、如何なる時を経てもお前の姿形は変わることはない、時計の針に潜む熱帯魚船、緑の草葉の血流、火星人の下半身、脚首の多数決プログラム、電子雨の甘味菓子、ところどころが一体混雑になると元には戻れない、紅い羊、RED RUM。
座敷牢の陰から顔を見せる鰻の鱗、紙材質の解ける絵日記を書く若者、自己申告するアメーバは時として五月雨、ばらばらになった亡骸は塩で煮て食べよう、三人がかりでやっとの大仕事は宇宙でも珍しいのです。例えばそれは、加速する彗星のダンボールを指先で回転させること、呼び鈴の目をした鹿の子どもを見つけること、狸の顔をした狐、狐の顔をしたギター、狐の顔をした狸の声のエレキギター、その短音、長音、単音美学、ストローク、カッティング、ブリッジ・ミュート、など、それらを奏で遂げること、西瓜の目玉を綺麗に洗うこと、パスタの河川で洗濯を一日中五千二百六回行うこと、兎の首輪を四輪駆動のガソリン・タンクに食べさせること、キャブレターへの恋文を英訳すること、野菜の話し言葉を富士山に伝言すること、白電球の未来を煙草の吸い殻、そして灰皿に見せつけること、ライラック柄のスカートを蜥蜴の亡骸が燃える炎で灰になるまで燃やし続けること、サスペンダーを一度、塵箱のペットボトルの山中の土の中に埋めて、三万年後にまた取り戻しに来ること、鉄色の車道を陰忍者と歩き回って、アメジストを見つけること、太った魚にヘッドライナーを務めさせること、事務所の性欲を奪い去ること、左翼と右翼の金玉を砕き割ること、不貞なアメリカン・ドリームに終止符を打つべく、ロシアン・ルーレットを針金虫と決闘すること、四葉のクローバーで空を造ること、爽やかな顔で本をクリーム味に注文し直して、持って寄越させること、女の子の悪趣味の花弁を撫でること、女の子の悪戯な破壊的恋愛気質をうまく騙し貶めること、男の子の嘆きを払い捨てること、男の子の怠惰を殺傷に至らせること、首飾りの願望が何であるのか、作文に書き起こすこと、海辺で見た夢を一部始終、亀の甲羅の部屋でポータブル・レコーダーに語り尽くして、録音すること、メゾン°卵をかき混ぜること、それで果てしない銀河の卵焼きを作ること、そしてそれを食べて、冥王星の王子様に感想を伝えること、間違いなく、美味であったと、鉛の酒、RED RUM……
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ドミノは、自分の名前を捨てることにした。アルヴァラーサという、その名前の響きを。フォクシアはもはや自分の名前など覚えていなかった。何故か、それはわからない。とにかく二人は海辺に来ている。紅みがかった夕日と、漣を砂浜の波打ち際に往来させる場所に。二人はそこで夕陽に照らされながら、性行為をした。そのセックスは、非常に淫しく、醜いものであったように思える。決して高尚ではない、美しくもない、ただの獣の乱行、涎や唾の飛び散る下品な行為、二人は喘いだ。しかし海には魚も鳥も居ない。もちろん他の人影もない。二人は何かを気にする必要なんてなかった。二人を見ているのは、貼り付けられたような抽象的な山と、灰色の今にも崩れ落ちて壊れてきそうな空だけだった。それぐらいの環境下で、二人は叫んだり互いをまるで喰い千切り合うの如く欲望を放ち散らばせた。
その時、二人の元に一匹の野良犬が駆け寄る。いや、猫であったもしれない。その姿は凶暴で、今にも目の前にいる誰彼構わずを食い殺してやろうと言う剣幕。しかしドミノとフォクシアは自分たちの欲求の発散の中に至るばかりで、その獰猛の存在には気付くことはない。やがて、犬が猫の凶暴生物は、二人の体に飛び付く。
フォクシアはその凶暴の存在に一足早く気付き、素早くそれを振り払った。しかし犬か猫は、ドミノの顔面に覆い被さる。ドミノが性欲の末端から意識を取り戻した時にはもう遅く、彼はその凶暴の権化に、束の間を持ってして食い殺され、咬みちぎられて、儚く死んでしまった。すると犬猫はその残体をそれ以上に食い貪ることなく、これで未練は無くなったとばかりに、口の周りを血塗れにして、何処かへと去っていった。フォクシアはそのドミノの無惨な遺体を、何をするでも言うでもなく、ただ静かな波打ち際の孤独な世界の内側の中で眺めていた。
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文字数: 2998
カテゴリー: その他
投稿日時: 2026/2/26 3:46
最終編集日時: 2026/2/26 8:18
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)