かくれんぼ

かくれんぼ
あの日、あの時からずっと探している。ねえ、私の負けでいいから、早く出てきてよ。お願いだからさ。 「もーいーかい」 「まーだだよ」 「もーいーかい」 返事はない。どうして、と思ったところで目が覚めた。 「…どうして、じゃないよ」 ベッドの上で独りごちる。カレンダーを見て気付く。あれから今日でちょうど十年。こんな夢を見るわけだ。壁掛けのコルクボードに貼り付けた写真に目を向ける。小学生の私と、親友の笑顔が並んで写っている。 「ハルちゃん…どこにいるのさ」 あの日。かくれんぼの途中だったあの時。二人で手を繋いで逃げた私達を、呑み込んだ波。私は公園のポールと、ハルの手を掴んでいた。波に揉まれる中で、ハルはぱっと私の手を離した。彼女の方を振り返った。彼女は笑顔だった。わざと手を離したのだ。そのまま、ハルは波に呑まれて見えなくなった。私もその後ポールを離してしまった。目覚めたときに彼女の姿はなく、私だけが助かった。それからずっと、ハルは見つかっていない。私は地元にいるのが苦しくて、大学進学と共に東京に来て、そのまましばらく帰っていない。
白本竜也
白本竜也
短編を書いてます。 Twitterでは140字小説を主に色々と。 よろしくお願いいたします。 Twitter: @shiramoto_140