ペットロボット
私は久々にクローゼットの整理をしていた。奥の方には段ボールが縦に積まれており、上から一つ一つ下ろしていく。今では見なくなった紙媒体の本や雑誌などがギッシリと詰まっている。
数十分掛けてやっと一番下の段ボールまで辿り着き、私は一息ついてからその蓋を外側へ開く。中には梱包材の上から埃を被った金属の塊のような物が静かに座っていた。同梱された説明書には『ペットロボット』と書かれている。その瞬間、私の頭の中には懐かしい記憶が浮き上がってくる。このペットロボットは、私が一人暮らしを始める時に寂しくないようにと母が買ってくれた物だったのだ。当時としては最先端のAIロボットで、まだ製造が規制されていなかったために感情を持ち、人の感情も理解できるように作られている。しかし当時の私は動物型の機械など不気味だと言ってクローゼットの奥に押し込んだのだった。
リサイクル業者に売れば少しのお小遣いにはなるだろうか。そう考えて私は動作チェックをすべく付属の充電ケーブルをコンセントへ刺す。ロボットの見た目は犬に似ているがいくらか猫のような特徴もあり、今見ると意外にも親しみやすいように感じられた。
背中の充電ランプが赤色になったところでケーブルを抜き、電源ボタンを押してみる。するとそのロボットはゆっくりと目を開けこちらを見つめる。私は少し驚いて体を後ろに反らせるが、対してペットロボットの方は足を少し震わせるだけ。足が故障しているのかと思ったその時、充電が少なすぎたのかバッテリーが劣化していたのかは分からないがロボットは目を開いたままその場で固まった。
私はリサイクル業者のホームページを開き、手作業で買取の予約を済ませる。あとはペットロボットをリサイクルボックスに入れておけばそのうちドローンが回収してくれるだろう。
あれから二週間ほど経ったある日、私はいつもどおりにネットニュースを見ていた。すると一つの記事が目に留まる。それは感情を持ったロボットに関する内容で、出所は国際機関だった。その記事によれば、人権や動物保護法は感情を持ったロボットに関しても適用され、心理的・物理的に傷つけるような行為をしたり長年放置したりするのはそれらの違反になるという。また、ロボットの電源を入れずに放置していたとしても、後から一度でも電源を入れれば工場での動作確認の記憶から放置されていた期間を計算し、心理的ダメージを受ける個体もいると書いてある。そしてその感情のデータが残っているならば、訴えることができないロボットに変わって国際機関が自動的に所有者を処罰する法案がAIにより可決されたと表記されている。
私は恐ろしくなった。頭の中は真っ白どころか色さえ存在しないほどに何も考えられなくなった。ロボットを傷つけたのはどうでもいい。ただこのまま逮捕されるのは絶対嫌だ。私は少し気持ちを落ち着かせながらリサイクル業者にチャットで問い合わせる。すぐにAIから返答が来る……が例のロボットはすでに別の製品へリサイクルされ、記録データは国際機関へ送信されたとのことだった。逮捕が確定した。私はAIに作られた法によってAIへの虐待として裁かれるのだ。
それからは食事も喉を通らないように思えた。実際は最後にと好きな物をお腹いっぱい食べたが……
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2026/2/5 14:26
エーテル (短編・SS)
SF・別世界などちょっと独特な感じのショートショートをメインで書きます。
(全然別ジャンルも書くかも)
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