祓い屋のお仕事

真夏の昼下がりのこと。とある屋敷に来訪者があった。屋敷の主は八染 綴(やぞめ せつ)という名の青年である。八染という家は妖祓いを生業としていた家であったが恨みを持った妖に喰われたり、同業者に命を狙われたり、見える力を持つ子供に恵まれなかったりと様々な原因によって廃業。同業者からは凋落した祓い屋と言われていた所に産まれた現当主の八染綴には高い妖力と祓い屋としての素質があった。そして、21歳という若さにして家を復興させた人物である。 八染家のインターフォンを鳴らしたのは同業者の射雨 緋色(いさめ ひいろ)。彼もまた若いながらにして高い妖力を持つ祓い屋であった。 「はい」と返事をして玄関の扉を開くのは黒髪黒瞳の美少女。 「射雨様ですね?お待ちしておりました。どうぞ、中へ。」にこりと笑みを浮かべ少女は射雨を中へ促した。広い室内には人の気配が無い。普通の人ならば寂しい家と思うだろう。しかし、この屋敷には妖の気配がそこらじゅうにある。 (寂しいどころか賑やかなくらいだな) 射雨はそう思った。 「こちらです。」と開けられた先は広い和室で、黒髪の美しい顔立ちの人が座っていた。 その人は「どうぞ、座ってください」と射雨に着席を促す。声は低く、男と分かる。美しさの中にはどこか妖しい雰囲気があるその男は線が細く、黙っていれば女性のようだった。真っ直ぐに伸びた黒髪は肩にギリギリつかないくらいの長さで切りそろえられている。黒い瞳は心の内を見透かされそうになる。妖と言われても信じてしまいそうだった。対象的に射雨は淡い茶髪は猫っ毛でいつもどこかはねている。瞳は深緑で、顔立ちは黒髪黒目の男とは違った柔らかな美しさ、華やかさがあった。 「お久しぶりですね、射雨家の若様。」 その男、八染家当主の八染綴が言う。
赤木
赤木
学生 2022/11/24開始 初めまして。拙い文章ですが気に入って下さるととても嬉しいです。BL作品、ほの暗い作品多いと思います。