牛丼
秋の空気を感じながら男は牛丼特盛を頼む。
卓上に綺麗並べられている調味料全てを少しづつ、また丁寧に牛丼に振りかけ、最後に優しくそっと紅生姜を乗せ終えると、男は悲しげな表情でこう言った。「俺、かけれるものは全部かけるんすよ…」
店内は深夜1時とは思えないぐらい賑やかで、酔っ払い、大学生の笑い声が響き渡る。私は間髪入れずに、口からドの音と鼻からソの音で「汁だくですか?」と尋ねた。男は今にも涙が溢れ出しそうな瞳で沢山の調味料がかけられた牛丼を見つめながら「そうかもしれないね」と呟き、はにかんだ表情で牛丼とセットでついてきた味噌汁の蓋を開ける。その瞬間カウンターから
「287番でお待ちの方〜」と明るい声が店内に響き渡る。
どうやら私のネギ玉牛飯特盛チーズトッピングが出来上がったらしい。私はすぐに立ち上がりズボンのチャックを高速で上げ下げしながらカウンターに向かと小さな異変に気付いた。
「ちょっとちょっと困りますよ、私が頼んだのは温玉です。これ生卵ですよね?」とソの音で店員さん伝えた。
「失礼しました!しかしお客様、うちの生卵は和歌山県産で、普通の生卵と黄身の大きさが違うんです。」
「知らないよ!さっさっと作り直して!」
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/11/5 12:04
最終編集日時: 2025/11/5 12:11
Kazato
曲作ったり書いたり弾いたりしてる人