フットスタンプ・アンド・ハンドプリント

 廃校の廊下には砂が積もり、靴底を滑らせてくる。 「見て」ヒナの短い呼びかけを受けて、前方の床に目を凝らす。 「……足跡、か」 「人の足、同じ形、一種類だけ。……どう思う?」 「不自然だな」結論から口にする。「なぜ、まだ新しい跡がある? どうして一人分だけなんだ?」 「誘い込んでるね、間違いなく」ヒナが目を上げ周囲を見渡す。「“手形”の奴とセットだ。どっかに仕掛けてあるはず」  頷いて、廊下の奥に目を向ける。足跡が向いているのは、この先。だが、足跡の群れがあちこちから合流してきている。教室のドアや、外に通じる窓の下はおろか、到底歩けるはずのない壁や天井まで、重なり合うように足跡が伸びている。  いや、増えている。足跡の主もいないまま、足跡だけがいつのまにか増えていて、 「……ミコト、そこ!」
アムセット