その猫妖怪と時を越えて

その猫妖怪と時を越えて
 湿気で気だるい空気が肌を纏う。節電だなんだって高めの温度に設定されたクーラーをつけても暑苦しい風が出てくるだけだ。 そんな自室にこもって、ベットにだらしなく寝転びながら本を読む。それが彼女の高校生最後の夏休みになっても譲れない、夏の定番の過ごし方だった。 「はあ、推しに会いたいなあ」 本を熱心に読んでいた彼女が切ない声で呟いた。 その本はいつも呼んでいる最新のアイドルの写真集…などではない。古びて破けて、少しカビ臭い何かの書。 彼女のいう推しは現代のアイドルではなく。
橙花
橙花
気が向いたときに。 アイコン→ノーコピーライトガール様