感情

感情
 由美の墓の前に行ってから数日が経った。僕は押し入れにしまってあった埃の被ったギターを取り出し弾いてみた。チューニングが狂っている。まるで今の自分を象徴するかのような音だった。あの日から少しずつ生活に変化を加えてみた。目的のない散歩をしてみたり、スーパーで値引きの弁当ばかり買って食べていたのに料理をしてみたり。由美が死んでから無色になっていた世界が色づき始めた気がした。学生の頃から興味があったボランティアも始めてみた。そこでの作業は僕の心に大きな変化を与えた。そこであった様々な人と交流もしてみた。少しずつではあるが、僕は人間らしい感情を取り戻しつつあったように感じた。    ある日、ボランティア活動で知り合った女性が柔和な笑顔で話しかけてくれた。彼女は由美とは対照的で、僕の身長より少し背が低いくらいで、胸元まで神を伸ばしている女性だった。幾度かボランティア活動で会うようになった彼女は少しづつ自分の過去を語り始め、彼女も大切な人を亡くしたことの経験があるということを知った。彼女の話を聞き、僕自身の話もしていく中で、お互いの距離が近くなっていき、初めて由美以外に心を開きたいと思う自分に気づいた。同じ境遇の中、前を向いている彼女に憧れの感情を抱いたのかもしれない。彼女は僕には前を向くきっかけをくれた。
テツヤ
テツヤ
初心者🔰です。拙い文章かと思いますが読んで頂けたら嬉しいです。