ラナンキュラスは橙色

私にはもうずっとぴったりなものがありませんでした。 先月買った青いシャツも、生地は柔らかくて心地よいのですが襟の形がどうもしっくりきませんでした。 私が今まで出会ったひとや、本や、食べものを思い返すと、ぴったりなものはあまりなかったように思います。 強いていうなら、給食のココア揚げパン。休日に母がかける掃除機の音。放課後の校庭の砂埃。 でもそれらは全て遠い昔の記憶です。 さて、そんな私はついに今日、久しぶりのぴったりに出逢いました。 “橙色のラナンキュラス” それは、幼い頃に和紙でつくった飾りの花によく似ているのです。花弁一枚はさらさらと軽く、それらが何重にも重なってずしんとたっぷりと存在している姿が私の眼にはとても素敵にうつりました。まるで、太陽のようなそれは私の心にぴったりでした。
せい
せい