捜索
私は、くすんだ紅色の扉の前に立ち、チャイムを二三度押した。電子音が繰り返し流されるが、中から誰かが出てくるような気配は一向にない。
誰か、、というのも、三日前から職場に現れず、連絡も取れなくなった同僚のことが気になって、休日にこうしてわざわざ足を運んだのだ。相変わらず扉が開く様子もないため、私は持て余して、部屋の前で彼に電話をかけたが、中からうっすらと着信音が聞こえるだけだった。もちろん、他の友人も彼の行方は知らないし、隣人に尋ねても、どうやら何も知らないようだった。
依然として紅いままの扉に、私はだんだん苛立ってきた。あいつに何かあったのか?まさか居留守を使っている訳でもあるまいし、悩み事だってないような男だ。
私は電話も切ってしまって、最後に、ドアノブを乱暴にガチャガチャと動かした。開かなかった。まあ仕方ない。明日もとりあえず来てみて、それでも駄目だったなら警察にでも行こう。元々これも捜索というよりは、いない、という確認の作業にすぎなかった。私は、彼がこの家にいるとは思っていなかったのだ。そうして、私は部屋の前から去ろうとした。すると、彼の郵便受けにすこしだけ隙間が開いていて、中に数枚の紙が入っていた。そこには、罫線をはみ出して書かれた、汚い文字の羅列があった。
「私を探しに来てくれたあなたへ 将田 正二
先ずはじめに、『あなた』と書きましたが、別にあなたがこれを読まなくても構いません。本質は読んでもらうことにありませんから。しかし、非常に申し訳ないのですが、ただ一つ頼みたいのは、私の行方不明の理由を、夜逃げ、ということにしておいてほしいのです。別に理由は他に何でもいいです。そんなことにこだわりません。しかし、頼んでおいて折角ですから、あなたには本当の理由をここに書き記しておこうと思うのです。
二日前、私は電車の中でとある人に出会いました。それが理由です。見た目がどうとか、詳しいことは書きません。あなたたちが変な気を起こしてしまえば大変ですから。。。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2026/2/2 23:35
最終編集日時: 2026/2/3 14:14
後川
遅筆です。フォローしてくださる方
本当にありがとうございます。
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第八回N-1 9位 318点